経営者の方の相続は一般の方より少し…いや、はるかに複雑になります。
当然、その会社の存続や後継者をどうするかは元気なうちに考えておかねばならないものですが、
何の対策もないまま経営者が亡くなった場合に問題になる点を順に見ていきます。
1.事業用の不動産を所有している
2.自宅を担保にしている
3.社長が会社にお金を貸している
4.自社株の評価はいくらか
5.結論
1.事業用の不動産を所有している
社長の所有する不動産を会社が使用しているケースは多くあります。
家族経営の商店や(元)有限会社はもちろん、売上10億以上の株式会社でも
不動産の一部は会社名義になっておらず社長名義のまま、ということはよくあることです。
ただ事業用不動産は会社継続において不可欠です。
ここで社長さんが亡くなり相続が発生した場合に
後継者の方がその土地すべてを取得せず、
他の相続人の方と共有にしたり、後継者以外の方が相続してしまうと
その上の建物(たとえ会社名義でも)に対して、土地の所有者に権利があるために、
土地の買い取り請求、賃料をめぐってのトラブル、最悪の場合は立ち退きということもあり得ます。
2.自宅を担保にしている
会社の借入れの担保として、社長の自宅や土地に抵当がついていた場合、抵当付きの自宅としてひきつがれます。
当然、抵当付きの自宅を誰がひきつぐかの問題も起きますが、
会社の業績が悪くなった場合、金融機関は債権回収をおこなう可能性があります。
最悪の場合、ひきついだ自宅を手放さなければならないケースもあります。
3.社長が会社にお金を貸している
相続において、他人に貸しているお金も相続財産にプラスしなければなりませんが、
社長がその経営している会社にお金を貸している場合も同様に相続財産となります。
経営のために、懐から会社に貸して精算せずにそのままになっているケースはよくあることです。
(うちの父がそうでした・・・)
ただ、これはそれまで精算していないだけあって現金化が難しく、書類上の金額でしかありません。
後継者の方がひきついでもそのままにしておくでしょうし、
後継者以外の経営に無関係の方が相続した場合、会社が返済請求をうける可能性があります。
4.自社株の評価はいくらか
預貯金や不動産を大きく上回り、財産の大部分が自社株である、ということも十分にありえます。
当然、会社経営と関係のない人には価値がないものですし、
もし後継者以外の人が相続したり、株が分散すると会社の経営基盤が危なくなってくるので、
やはり後継者の方に集めなければなりません。
ただ、この自社株の評価額を把握しておかないと対策はなにもできません。
相続がおきてから算定してみたら予想の数倍になっていて相続税の支払いさえできない、という状況も十分あります。
最悪の場合は相続人のみでなく、従業員全体にも関ってくる大きな問題です。
自社株評価を下げる、生前に移転する前に
まずは所有する自社株の価値が現在いくらなのかを大まかにでも算出しなければ始まりません。
自社株がどの評価方法で計算されるのか、
実際にいくらになるのか、
何が原因で評価額がそうなっているかを把握することが重要です。
まずは今の会計顧問の方に聞いてみることが先決です。
結論;
それぞれのケースごとに違いますが、
経営者の方は事業承継のため、元気なうちに対策をする必要があります。
この元気なうちに、というのが重要です。
遅くなればなるほど、自分の体調で手いっぱいになったり、判断能力がにぶったり
親族内は当然、会社内や取引先、融資先の信用が落ちてきます。
早くから事業承継を進めていないともちろん厳しくなりますが、
後継者が決まっていない、というのは論外です。
相続対策には時間がかかるものが多くあります。
病気と同じく早期発見・早期治療!!
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