事業承継のもう1つの面「自社株の承継」です。
自社株は評価方法、税金計算ともに複雑ですので、顧問税理士をはじめとする専門家に必ずしてもらってください。
人によって評価額も変わることもあるので、セカンドオピニオンに意見を求めるのもよいでしょう。
また、評価額が高い場合は贈与税が多額になるため、いろいろな計画が必要になります。
自社株の評価がいくらになるか、後継者は誰かで、移転の仕方が変わってきます。
優良企業だと自社株評価が高くなり、贈与の場合は贈与税、売買の場合は買い取り資金の問題が出てきます。
1.生前贈与の移転
2.売買の移転
3.自社株評価を下げる
4.株式以外の財産
1.生前贈与の移転
贈与には年間110万円まで非課税の「暦年贈与」と
親子間でしたら2500万円まで(現時点では)非課税の「相続時精算課税」の2通りがあります。
株価や相続財産の総額がそれほど高くなく、これから株価が高くなることが予想される会社なら
相続時ではなく現在の評価額で移転できるので「相続時精算課税」が有効です。
後継者である子は贈与税を支払うことで移転はすぐにできますが、
生前贈与はすべて遺留分減殺請求の対象になるため、(税法上では3年前までの贈与のみが対象)
他の相続人に対する配慮(代償金や他の財産)が必要です。
2.売買の移転
売買の場合は適正価格での購入資金があれば、
移転した自社株は相続時の対象にならず遺留分減殺請求の対象からも外れるので
亡くなった時に問題になることはありません。
しかし、そのまま現金が必要になるので資金調達が問題です。
また、取得額よりも売却額が大きいと、売る側であるオーナーに売却益として20%の譲渡税がかかります。
(所得税15%、住民税5%)
3.自社株評価を下げる
自社株の評価額は、その時の会社の業績や純資産額によって大きく異なります。
株価が高くて移転しづらい場合には
この株価の変動を利用して決算前に一気に株価を下げ、下がった時点である程度まとまった株式の移転を行います。
株価を下げるには先代社長(をはじめとする役員たち)への役員退職慰労金や
契約者を会社とした生命保険の活用で費用を損金算入することで一時的にマイナス決算にすることなどが考えられます。
退職金は、最終報酬月額やそれまでの役員通算在籍年数、役職によって1億以上のものも可能です。
ただし、定款の定めもしくは株主総会の決議が必要で、
実際に取締役辞任の手続きを行い、経営の決裁権から退くことが要件となります。
十分な現金がない場合、不動産や役員保険の現物支給、分割払いにする方法もありますが、
以上の資金繰りには金融機関との連携、信用は不可欠なものです。
4.株式以外の財産
ズバリ遺言書の活用です。
財産価額と相続人間の関係にもよりますが、遺言書で決めておき、相続時に分割できるようにします。
移し終えていない自社株があれば相続財産となるので、株式が分散しないように対策が必要です。
できる限り後継者が事業に関する不動産や資産は取得し、
他の相続人に対しては、最低遺留分に値する預貯金や他の不動産を相続させます。
自社株の評価を含め、株価を下げるスキームや移転のスキーム、遺言書の内容などいくつも考えられますが、
「部分最適」ではなく、「全体最適」に対応できる専門家のチームが必要でしょう。
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