後継者が安定した経営を行うために必ず必要なこと、それは
先代経営者の所有している自社株と事業用財産とを名実ともに後継者へ引き継ぐことです。
それらの財産を後継者へ集中させる・・・
しかし、その方法は様々で、同時に他の相続人の遺留分にも配慮する必要はあります。
先代経営者からの生前贈与や遺言などによって、
後継者が他の相続人の遺留分(最低限の相続の権利、原則、法定相続分の2分の1)を侵害して多く財産を取得した場合、
他の相続人は1年以内に遺留分減殺請求を行って遺留分を取り戻すことが出来ます。
先代の財産で、預貯金等の金融資産が少なく自社株と事業用財産がほとんどの場合、
この遺留分の制約があることでスムーズな事業承継が行えない恐れがあります。
その遺留分の支払いに自社株を渡さなければならなくなったら・・・
会社のある土地が他の人のものになってしまったら・・・
自社株と事業用資産の分散、遺留分問題を防ぐために何をすべきでしょうか?主な対策をみてみます。
1.公正証書遺言
2.資金調達
3.会社法を活用
4.民法特例を利用
1.公正証書遺言
自社株に限らず、先代経営者名義のもの全てに対する分け方を指定を記載した公正証書遺言を作成することは
後継者だけでなく残された相続人全員のためにも間違いなく必須です。
例)
・公正証書にすることで、相続人間の話し合い自体を回避するとともに名義変更の手続きを簡便化する
・自身名義の財産をもれなく記載し、継承する人を特定する
・遺言内容を実行するための遺言執行者の指定が必要
・不公平感をなくすとともに手続きをスムーズに進めるためにも専門的知識を持つ第三者を指定
2.資金調達
財産の移転にはどうしても会社や後継者に資金が必要になります。
メインバンクへの事業承継計画の提示、後継者に引き継いだ後も考えてこれからの関係をより良くすることが大事です。
また国も事業承継を奨励、支援を多く行っています。
政府系金融機関からの低金利融資や信用保証協会の信用保証も利用すべきでしょう。
例)
・分散した株式を後継者個人が買い取る
・会社が買い取って金庫株にし、株主の持ち分割合の母数を減らす
・現経営者所有の事業用資産を後継者もしくは会社が買い取る
・後継者以外の相続人に遺留分相当額を支払えるように現金を準備する
3.会社法の活用
会社法を活用し、自社株を経営者に集中させる方法もあります。
一度現在の会社定款や規定などを見直してみましょう。
例)
・設立当時の名義株主がいるならば早めの対応をする
・株式の譲渡制限規定を置き、株式を分散させないようにする
・議決権制限株式を後継者でない株主に与え、後継者の経営権を安定させる
・役員報酬規程の退職金や死亡弔慰金に関するものを見直す
4.民法特例を利用
経営承継円滑化法の民法特例~いわゆる株式についての除外合意・固定合意を利用も考えます。
数年前につくられたこの制度も徐々に利用しやすいように改正されてきており、
先代経営者と後継者ともに要件を満たしているのならば申請することが可能。
経営者から後継者に生前贈与された自社株式について遺留分の制限を受けず、財産を後継者に移転することが出来ます。
なによりも相続人同士での話し合いと合意、書類作成が必須です。
経営承継円滑化法の民法特例
要件)
・先代経営者が元代表又は現代表。推定相続人に株式を贈与している
・後継者は会社の現代表。先代経営者から株式の贈与を受けて、議決権の過半数を保有している
・推定相続人全員の書面による合意・・・・等
今回は少し専門的すぎでした。もう少し簡単な言葉で・・・という方は他の項もご覧ください。
上記はまだ一部ですが、時間がかかるものも多くあるので、いろいろな案を提示、考慮して進めていきましょう。
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