今年から相続税の基礎控除が6割に下げられたことにより、例年よりもみなさんの相続税への関心が高まっています。
ただ関心の的が相続税に対してであり、相続全般ではないことに危機感を覚えます・・・
「110万円まであげるなら税金かからないんでしょう~?」と本当にみなさんよく知っていますね。
110・・・今年聞いた数字の中でダントツです。
基礎控除の3000万とか3600万ではなかった。
これが相続税のことが各方面でとりあげられ、ついでに節税や生前贈与に関して国をあげてあおりまくった結果。
相続問題というものがまちがって伝わっていないことを望みます・・・
ということで今回は生前贈与について。
生前贈与とはその名の通り、生きているうち「生前」に財産を譲る「贈与」することです。
目的としては、死後に分けることになるその人の財産をあらかじめ渡してしまい、
・相続財産を減らして相続税の節税をする
・のちのち分け方でもめないよう早いうちにあげたい人のものにする
ことが主です。
生前贈与には大きく分けて「一般贈与」と「相続時精算課税制度」 の2種類があります。
1.一般贈与
2.相続時精算課税制度
3.その他の非課税制度
4.結論
1.一般贈与の基礎控除をうまく利用する
「暦年贈与」ともいい、贈与税の計算は1月1日~12月31日を区切りとして課税されます。
この制度には、贈与を受ける人1人あたり年間110万円の基礎控除が設けられていて
贈与額によって10%~55%の贈与税を贈与を受けた人が支払うことになります。
またこの110万円はもらう人が基準なので父と母2人から100万円ずつもらうと200万円となり
基礎控除を超えた90万円に対して10%の9万円を翌年の3月15日までに税務署に申告・支払いをすることになります。
逆に、あげる側は何人に対してでも、相続人である子や孫以外の人にも財産を渡すことができます。
ただし、これには注意点が。
・亡くなる3年前にさかのぼって相続税に加算される (相続人に贈与した場合)
余命宣告をうけたので、とあわてて贈与しまくっても3年分は持ち戻しになるのでムダ、ということです。
2.相続時精算課税制度を利用する
こちらは2500万円までの特例控除があり、贈与時点では2500万円まで一切贈与税を払う必要がありません。
(2500万円を超える部分については一律20%の贈与税課税)
相続財産、特に不動産の前渡しによく利用されるものです。
ただし、亡くなる何年前のものでも全額相続発生時には算入して計算しなおします。
その他にも要件があり
・60歳以上の者から、20歳以上のその者の子や孫への贈与であること、と対象者が限定
・この制度を利用する際には税務署に申告(非課税枠内でも)
・一度利用するとその人からの贈与はその翌年から一般課税(暦年課税=110万円まで非課税)は利用できない
等があります。
あまりメリットがなさそうですが、
・相続時に相続税がまったく(ほとんど)かからない
・賃貸不動産の家賃収入を先にわたせる
・自宅を同居している息子名義にしたい
といった人なら利用価値はありそうです。
父から2500万円の贈与を受け相続時精算課税制度を利用、
母からは今まで通り年間110万円までの非課税枠のある一般贈与を利用、ということは可能です。
3.他の非課税制度
住宅取得資金贈与 ~1200万円まで(年によって変わる)
要件
60歳以上の親から20歳以上の子・・・など
おしどり贈与 ~2000万円まで
要件
これから住み続ける住居のための贈与
夫婦の婚姻期間20年以上・・・など
教育資金の一括贈与 ~1500万円まで
要件
直系尊属から(例:祖父母から孫)学費など教育のための贈与
贈与を受ける側が30歳までの適用
金融機関にそのための口座を設ける必要・・・など
結婚子育て資金贈与 ~1000万円まで ・・・など
4.結論
贈与にはさまざまな方法がありますが、
内容によっては節税が思うよりできなかったり、
ただ財産を目減りさせただけだったり、
その贈与がのちのちの相続時に問題になったりすることもしばしばあります。
相続税に関していろいろな本や雑誌、メディアでとりあげられていて
一般の方にも身近なものだということが今年は本当に実感いたしました。
ただ、
勉強したり知識を持つことは、知らないよりはるかによいですが
理論と実践することとは全くの別物だということを認識してほしいです。
今年ご相談にみえた方のおこなっている相続対策の多くが、
的外れもしくは裏目だったことには驚きました。
と同時に
まちがった考えが広まらず、本当の意味での相続対策を知ってほしいとも思います。
相続対策も病気も早期発見・早期治療!
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