成年後見制度って?

判断能力が下がったり、意思疎通が難しくなってしまったり、

認知症になってしまったりしたときは、

その人だけでは自分の財産管理ができなくなります。

 

一般の生活に必要な買い物や、少額なものは除くとして

 

法律では、

財産を処分したり契約をするには本人の「確かな」意思が必要とされています。

ですので本人に意思そのものがないとか、

あっても不十分な時は契約を結んでも無効になります。

契約をしても追って取り消すことができるのです。

 

例えば、

高齢者をねらった訪問販売で高額な羽毛布団をだまされて買ってしまった、とか

押し売りみたいな悪徳商法に半分脅されて契約してしまった、とか

未成年なのに契約した、などです。

 

ここで「?!」と思った方もいるかもしれませんが

実は未成年の契約は全部無効!なんですね。

法律的に代理人となる親が無効にすることができる。

だから「学生ローン」で親の保証人が要らない、というのはそういうわけなんです。

中高で民法を教えていれば確実にローン業者はつぶれると思います。

 

話がそれましたが、

後見制度の必要性として、こういった契約から本人を助ける役割をします。

しかし、あとから業者や窓口と裁判になったときに

「本人には正常な判断能力がなかった」ことを証明するには

実際にはなかなか難しいのです。

 

そこでそういった人たちを守るために他人のサポートが必要であることを公に証明する必要があります。

 

相続に関して言えば

身内、例えばご主人が亡くなった場合、

認知症が進んだ高齢者は遺産分けの話し合いに参加できません。

 

いわゆる「署名捺印」というのは本人の意思そのものですから

何が財産なのか、何をどうするべきか、わからないままハンコを押しても

後々無効か紛争の種にしかならないわけです。

症状がひどければ、「ご主人が亡くなったこと」自体も理解していない場合などはなおさらです。

 

このように、その人を悪徳商法や無駄な出費から守りつつ、

必要な財産の管理、契約、遺産分割協議をできるようにして

その人の権利と財産を「守る」ためにあるのが「成年後見制度」です。

 

「守る」ということですから、

今までの生活に関係なく、余計なお金を使ったり、

高くなりそうだから、株を運用するとか家を売るとかできないのです。

 

相続に絡むご相談の場合、

だいたいある人が亡くなって署名捺印が必要だ、となってから来ることがほとんどです。

 

本当にこれが悲しい。

残念ながら我々もかなり厳しいお答えをしなければなりません。

医学の発達した現代の社会において、

夫婦はもちろん、親と子でもかなりの高齢になっていることがあります

(以下下記リンク参照)

そこから後見人を決めるとなると

それはそれは大変なことになります。

 

「法定」(すでに認知症になってしまっている場合の)後見人を選ぶには

家庭裁判所に申し立てて審判が必要になり、

複雑な書類作成から始めたら数カ月もかかります。

 

まず、身内である相続人どうしではなることはできませんし、

希望した候補者にしてもらえるとも限らず、

下手をすると士業などの専門家が選ばれて報酬が月3万以上かかったりします。

 

しかも契約に関することが終わったり、遺産分けが終わったりしても

それで終わりではないのです!!

 

ちょっと厄介だから、反りが合わないからやめる、ということができず

どちらかが亡くなるまで続けなければならない無限地獄です。

 

よい制度のようにみえますが、

財産管理状況を裁判所に随時報告しなければならなかったり

後見人になる人によっては取り調べのような面接があったり

通常生活に必要なもの以上の出費が認められなかったり、と

とても財産の移転や使い込みどころではない、裁判所の監視下に置かれます。

(それでも横領して捕まる人がいるから驚きです)

 

もし後見人をつけるならば

元気なうちに希望する人に後見してもらうことを約束する

「任意」後見人をつけるほうがオススメです。

「任意」後見人に関してはまた別稿でお伝えいたします。

 

 

 →→成年被後見人は遺言書を作れるか?

 →→老々相続は危険だ!