死ぬ覚悟をしないと相続対策はできない?

スイスの精神科医で心理学者のユングは

「死ぬ練習に20年かかる」と言いました。

すると今の平均寿命が女性86歳、男性80歳とすれば、

そこから健康寿命(なんでも自分一人でできること)の10数年を差し引いて考えても

最低60前には始めよう、ということなります。

 

人が一番「死」など意識するのはいつか。

幣所にいらっしゃるご相談者(特に男性)に聞いてみたところ、次のような時です。

 

 

1.自分が大きな病気にかかったとき

2.親しい友人が亡くなったとき

3.自分の親が亡くなったとき

4.どうにかなりませんか

 

1.自分が大きな病気にかかったとき

 

それまで元気であった自分に急に病気が見つかった。

入院などをしていろいろと覚悟した後に、なんとか無事に退院できた。

 

でも今後、治療や入院などが続いたら、いったいいくらかかるのか?

ましてや自分が亡くなったら、

自分の今持っている家や預金はどうなるんだろう?

残された人たちはどうなるんだろう?

と初めて意識をすることになります。

 

これは今のうちに決めておかないと!と決心し(かけ)ます。

 

 

2.親しい友人が亡くなったとき

 

まわりで今まで一緒に飲んでいたり、親交のあった友人たちが

ある時期(だいたい70歳くらい)を境に亡くなったりして、お葬式に行くことが増えてきます。

当然、遊んだり話す友人が減れば、出かける機会も少なくなり、

にぎやかな孫たちのいる3世代家族にでも囲まれていない方は特に

「孤独」や「死」という言葉が切実なものになってきます。

 

自分も今から周りの人たちにできることはしておこう!と決心し(かけ)ます。

 

 

3.自分の親が亡くなったとき

 

親が亡くなれば当然、お葬式、相続に関する手続きに関わることになってきます。

それまで気にしたこともなかった「兄弟との関係、話し合い」の場に直面することになります。

 

特に、長男で、

喪主となって法事やお墓のことなども大変だったとか、他に

自分には子供がいないとか、いても子が女性だけの場合、

今まで考えたこともなかった

「法事」や「お墓の承継」「今の家を老人だけで維持するのは広すぎるし大変だ」

「いざ自分が亡くなった時には、どうなるのだろう」と(法律面でなく)

現実に必ず直面する問題が出てきます。

 

お葬式や死後のことは決めておこう!と決心し(かけ)ます。

 

 

4.なんとかなりませんか

 

しかし、残念ながら先送りにしてしまうのが実情です。

決心しかけるコトと、実行するコトでは雲泥の差があります。

 

実際亡くならないまでも

事故にあったり、転んだりして頭を強く打ったらどうなるか。

なにかをきっかけに、歩けなくなったり手が動かなくなったら。

寝たきりで、意識もあいまいだったり、自分が今どうしているかわからないようになることもありうる。

 

よくあるんです。実際に。

お医者さんや介護関係者の方々は当然ご存じでしょうが、

私たちは仕事柄そういった方たちと接する機会が多いです。

 

結局、”その時”はそう考えても

ご本人もしくはそのご家族が、決心し(かけ)たのに

『喉元過ぎれば熱さ忘れる』かのように

「少し考えてみてから」「まだ大丈夫そうだから様子を見てからまた決めよう」

とブレーキをかけ、その数か月後に

 

「少し認知症が進んでしまっているんですが」「もう今にも亡くなりそうなんですが」

となってから、ご相談いただくことは少なくありません。

(少し認知症気味、と身内がいう方はだいたいはた目から見たらすでに認知症です・・・)

 

どうにもならなくなってから「何とかなりませんか」といっても

できることはほとんど限られてきます。
少なくとも、本人の希望の実現はゼロと言ってもいいかもしれません。

 

目の前の「決断」を先送りにしてしまったのですから

何も対策をしなかったならば

「少しの手間と費用」が

「多くの手間と余計な費用」となってしまうのは当然のことです。

 

いざ、“そう”なってしまった後に、

「同じ手間と費用、そして時間」でできるほど人の死というものは簡単ではありません。

 

平均寿命ー10数年と言われる「健康寿命」が過ぎた後は、

いろいろなリスクが想像以上に高いのです。

 

「あの時、決心しかけていたのだから実行しておくべきだった」

という言葉を聞くたびに

残念になるのと同時に、

「早めに相談してもらえればよかった」そして「無理してでもおすべきだった」と

我々の力と啓蒙の足りなさ、に悩むこともあります。

 

普段「死を意識している」といったら

「考えすぎだ」「まだ大丈夫だろう」というのが一般の意見かもしれませんが、
実際に、大きい病気や相続、喪主など経験してみると大違いです。

(私事ですが)

 

 →成年後見人は遺言書を作れるか? 

 →遺言書7つの誤解 その1