自筆証書遺言のデメリット

遺言書には大きく分けて

自分で書く「自筆証書遺言」と

最終的に公証役場で作成する「公正証書遺言」があるのはご存知のことと思いますが、

いろいろなところで「自筆」より「公正証書」の方が安全と言われています。

それはなぜでしょう。

(幣所でも、作るのは7割方公正証書なのですが)

 

1.検認をする必要がある

2.時間がかかる

3.相続人が立ち会う必要がある

4.紛失・変造・破棄の恐れがある

5.相続人全員のハンコが必要になることがある

6.紛争のタネになる可能性大

7.貸金庫保管は絶対NG

8.結論

 

1.検認をする必要がある

 

自筆証書遺言の最初の壁は「検認」が必要になるということです。

自筆証書遺言に基づいて遺言執行するには、

まず遺言者が亡くなった後、家庭裁判所に

遺言書の形状や内容を裁判所で確認する「検認」という手続きを申し立てる必要があります。

封をされた遺言書は、裁判所の検認手続きで開封する必要があり、これを怠ると過料が課せられるとされています。

 

この検認手続きには、

「時間がかかる」

「相続人が立ち会う必要がある」

など相続人にとってのデメリットがあります。

 

2.時間がかかる

 

この「検認」を申し立てるには、遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本を添付する必要があります。

また、裁判所に検認を申し立てるとすぐに手続きが進むわけではなく、

検認を申し立てて実際に検認ができるまでには1~2ヶ月以上かかります。

このように、自筆証書遺言だと遺言に従った遺産分割ができるまでに

戸籍収集と書類作成を含め2~3ヶ月はかかってしまいます。

遺言書に封がされていたら、その内容を見るまでに2~3ヶ月かかってしまうということです。

 

3.相続人が立ち会う必要がある

 

実際に相続人が立ち会うかどうかはその人の自由で必須ではありませんが、

(申立人は出席して遺言書提出の必要あり)

検認を申し立てるとすべての相続人に対して

「いついつ検認をしますけど出席しますか」という通知がいきます。

 

4.紛失・変造・破棄の恐れがある

 

当然本人が保管しておくわけですから、

どこかにしまっておいて誰かが見つけなければ意味がありません。

また見つけた人がどういう内容か知りたくて、

検認前に見てしまった際に自分に不都合な内容であれば、

変造または破棄してしまうことも十分考えられます。

 

5.相続人全員のハンコが必要になることがある

 

誰がその財産をもらうか、や金融機関にもよりますが、

もらう人だけでなく相続人全員の署名捺印が必要になることもあります。

 

内容に不満がある人が協力しなければ結局は最初からの話し合いに逆戻りです。

 

6.紛争のタネになる可能性大

 

「本人が書いたものではない」

「誰かが無理やり書かせたものだ」

「それを書いた時にはボケていた」

・・・いくらでも反対する理由になります。

当然裁判所行きでしょう。

 

7.貸金庫保管は絶対NG

 

実は、貸金庫は金融機関でも

相続人全員の協力がなければ開けて中を確認することも、

内容物の受取り、解約などもできないほど厳重に管理されている最終砦です。

遺言書は遺産分けの前に見つからなければ意味がありません。

 

遺産分けの話し合いが済んだ後でようやく発見されて遺言内容が全く違っていたら・・・

遺言を作った意味が全くなく、一度戻して遺産分けのやり直し、それに協力しなければ裁判所行きという可能性が濃厚です。

 

8.結論

 

自筆証書遺言は、家庭裁判所での「検認」は免れませんし、

その後、調停や弁護士に頼らざるを得ない事が実務上かなり多いので、

その分け方や家族関係などでよほど大丈夫と確認できなければ幣所でもGOサインは出しません。

(ただ、業者のようになんでも公正証書で!と勧めるわけではありません)

 

「遺言書があればもめない」というのは業者の決まり文句で

「”公正証書”遺言があればもめるもめない以前にその内容通り執行できる」というのが正しいです。