事業承継に潜むリスク

事業承継を総合的に行うことはかなり難しいものです。

やはり会社ですから身近な顧問税理士さんに相談することが多いと思います。

すると贈与税や相続税の節税対策だけになりがちですが、

 

後継者が本当にふさわしい人か、

株式が分散する可能性を考え、

経営に空白ができない計画を立てなければなりません。

会社を次期後継者に譲るということは相続と密接な関係があります。

 

 

1.贈与は安全なものか

2.後継者に株式を集中できているか

3.建設業などの許認可が必要な事業

4.多数の関係者が絡む事業承継

 

1.贈与は安全なものか

 

贈与と相続分(もしくは遺留分)の関係を考えているでしょうか。

まず生前に贈与することが考えられます。

 

税制面では、亡くなる前の「3年以内の持ち戻し」は割とみなさんご存知です。

社長が亡くなったときから3年以内に贈与したものは

すべて相続税の計算に入れるため、死期がわかってからあわてて贈与をしても

相続税の面では全く同じということです。

 

ならばそれよりさらに前に贈与していれば大丈夫かというと、

税法とはちがい、民法では

相続人間における遺産分けの話し合いというのは基本的に

生前に贈与したものはすべて計算に入れて話し合う必要があります。

株式や不動産、現金などを生前に多くもらっていた後継者は

いざ相続の時には何も取得できないこともあり得るのです。

 

 

2.後継者に株式を集中できているか

 

株主総会で後継者を取締役に選任しただけでは足りません。

議決権を確保できるように株式を持っているようにしないと、

会社の経営判断が後継者だけではすることができず、

 

(例えば相続人が3人いて3000株の株式があると、それぞれが自動的に1000株ずつ持つのではなく、3分の1ずつ共有する株式を3000株ずつ持つことになります=議決権問題)

 

残りの株式を持っている他の相続人や親族、第3者の協力を得なければならないため

会社が乗っ取られる、最悪の場合は会社ごとなくなってしまうことも考えられます。

相続の時を待ってからでは遅い可能性が高いのです。

 

3.建設業などの許認可が必要な事業

 

許認可には、毎年の決算報告や資産内容の他に

経営者としての実績、資格保持者の常勤が必要です。

社長が亡くなったときはもちろん、該当者が辞めた場合にも

許認可を継続させることで、経営の空白ができないようにしなければなりません。

 

相続による許認可の承継が可能であるのか

承継する場合の要件はなにか

は生前に調べておかなければなりません。

 

4.多数の関係者がからむ事業承継

 

会社経営者の場合、一般の方の終活とはちがい、

後継者、相続人、株主、債権者、従業員、銀行、取引先等の

多くの利害関係者が絡むため、会社の規模や利害関係が複雑であればあるほど

事前の対策が必要になります。

 

上記のことは「意外なほど」申告を主に行っている税理士さんは知らないものです。

早めの相談をしておく必要があるでしょう。

 

→→経営者の相続財産は区別しよう

→→経営者が必ず考えなければならない相続の話